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日々学んだことを書き留めておく。

【読書メモ】愛とか正義とか

愛とか正義とか―手とり足とり!哲学・倫理学教室

愛とか正義とか―手とり足とり!哲学・倫理学教室

読書猿さんと対談した: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいるにて、読書猿さんが勧める一冊として紹介されていたので読んでみた。

今まで読んできた本のなかで一番の衝撃を受けたかもしれない。

難しい言葉や概念はほとんど使われず、非常にわかりやすい文章なのだけど、さくさくと読み進めることは難しい。
読み進める度に考えることであったり、新しい発見に出会えたりで様々なことを思い起こしてしまう。

この本から得られる知識というものは非常に多岐にわたる。
しかし、そういった知識を得ることはこの本の本当の目的ではないのかもしれない。

哲学や倫理学といった学問の入門となる本書であるが、個人的に大事だと感じた点に絞ってまとめてみようと思う。

どんな本か

この本は哲学・倫理学の入門書である。
とは言っても、カントやヘーゲルニーチェアリストテレスなど過去の偉人たちの哲学を学ぶための本ではない。
「哲学」とは何かという根本的なところからこの本は始まる。

「当たり前と思われているもの」を捉える

「哲学」とは、「自分で考えて自分の答えをだすこと」だと本書では言っている。それが重要であると。

「自分で考えて自分の答えをだすこと」と言われると、私達が日常的に行っていることだと思われるかもしれない。しかし、それは本当であろうか。

本書では正義や愛、自由といったテーマを思考の対象としているが、それらの概念を自分たちの頭で考えたことはあるだろうか。
私達は無意識にそれらの概念を勝手にイメージとして捉え、理解した気になっているのではないか。

本書の目的はそこにあるのではないかと思う。
つまり、「当たり前と思われているもの」を自分の言葉で再定義し、その定義が正しいか反証を考える。どうやらその定義が正しそうだという確証が得られたとき、その概念をもとに与えられた命題、または自分が見つけた命題に対して自ら答えをだすために思考する。

本書ではこれらの思考の過程を追体験させてくれることで、「自分で考えて自分の答えをだすこと」ということがどういうことなのかを経験的に理解させてくれる。

これは水です。

「これは水です」とは、デヴィッド・フォスター・ウォレスという作家が2005年にケニオン大学で行った卒業スピーチのタイトルだ。

翻訳してくださった方のブログをここに置いておく。 j.ktamura.com

このスピーチの内容においても「自分の頭で考えること」の大切さを説いているが、重要な洞察が付け加えられている。

「自分の頭で考えられるということは、何について考えるか、ある程度自分でコントロールできる術を学ぶこと」を端折ったものだ
引用元: https://j.ktamura.com/this-is-water

自分の人生において大事なこと

「愛とか正義とか」と「これは水です」はともに「自分の頭で考えること」の重要性を説いていて、私はこの2つの文章に出会うことができて非常に良かったと思う。

私は今まで、幸福な人生とは「何も考えない人生のこと」だと思っていた。「何も考えない」とは本当に何も考えずに生きるということではなくて、「人生について思い悩む」ことだったり、今私が書いているようなことを考えないような人生のことだ。上手く表現できているかわからないが、つまりは世間が言う理想的な人生(結婚して、子供を産んで、日々働いて、、、みたいな)を歩むことが「唯一の」幸福な人生だと考えていた。

正直、幸福な人生とは何かを語れる言葉を今は持っていない。しかし、今まで見てきたように自分の抱える問題や悩みに対して真正面から「自分の頭で考え、自分で答えをだす」こと、また、「何を考えるか、自分をコントロールする」こと。この2つが自分の人生において大事であるとハッキリと自覚した。

まとめ

最初は「愛とか正義とか」の感想(思考過程を追体験させてくれる凄い本)だけを書こうと思っていたのだけど、何故かしっくりこなかった。非常に良い本だという実感を持っていたものの、何故そこまで自分はこの本を凄いと思ったのか、上手く言語化できていると思わなかったからだ。

「これは水です」はだいぶ前に目にした文章で、今回本を読んだあとに再度読み返してみたものだ。意図してなのか、無意識なのか覚えていないのだけど改めて読み返してみることでこの本のどういう部分に心を動かされたか理解できた。
自分の人生の根幹にはきっと「考えること」というのがあって、その「考える」という行為をわかりやすく、丁寧に、そして面白く書いている本だからだと思う。
「これは水です」では、人生において「自分の頭で考えること」の重要性について述べている。その点で「人生」と「考えること」が結びつきをハッキリと自覚できたのだと思う。

書評風自分語りになってしまったのだけど、「愛とか正義とか」は本当に面白い哲学・倫理学の入門書となっている。考えるべき対象がこの世界にごまんと存在し、解決されるべき課題も山ほど積み重なっている。そんな世界を真正面から捉えるために、この本で「自分の頭で考える」ことの練習をしてもいいのではないかと思う。